今回は、40代販売業さんが、「お客様の前でスタッフに叱責する」、「閉店後に不毛な叱責を長時間する」ようなパワハラ店長の心を変えた体験談をご紹介してみます。パワハラの解決策としては、パワハラ店長を頼ったり、店長に自信を持たせるようにしたり、サプライズパーティーを開いたりして、スタッフで一致団結して店長と打ち解けるように努力したそうです。何というか私は、40代販売業さんが、店長やった方が上手く店を回せるような気がします。後、お客様の前でスタッフに叱責って、客として見てると死ぬ程見苦しいけど、そんなんでも数字って残せるものなんでしょうか?
パワハラ店長の店に異動
現在40代の販売業に従事する北海道在住の女です。これは、パワハラぎみの上司を、みんなの知恵で解決に導いた話です。販売業は、店間の異動が多いものです。固定の顧客にいろんな店舗に足を運んでいただく目的もありますが、凝り固まったチームの雰囲気を、たまにシャッフルすることで風通しを良くする狙いもあります。
ある店舗の店長クラスの男性社員には以前からパワハラの噂がありました。「お客様がいようが、店内でスタッフに叱責する」「説教が始まると、勤務時間が過ぎても帰してくれない」など、良くない噂ばかりが耳に入ってきていました。
私は、副店長の立場で色々な店を回っていました。自分の中で副店長とは、店長を支えながら、スタッフの気持ちを店長に代弁する立場であると思っていました。(実は店長職より、重要で大変なポジションであるという自負があります)いよいよ、私もそのパワハラ店長が在籍する店への異動が決まったのです。
「先入観を持ってはいけない」と思いつつも、内心ドキドキしながら入店しました。初めて一緒に仕事をした店長は、売り場に立つよりも事務所でパソコンに向かっている時間の方が長い店長でした。経験上このタイプの店長は、スタッフからの信頼は少ないことが多いです。また数字を追い求めるタイプの店長には、感情論よりもデータや傾向で話を進める必要があり、個人的にも苦手なタイプの店長でした。
閉店後の不毛な叱責
ほどなくして、パワハラ店長の本領を発揮する場面を目の当たりにしました。閉店後、突然、怒声が飛び交ったのです。単純ミスでお客様からクレームをいただいてしまったスタッフへの説教でした。「これで、何回目だ?」「どうしてこんなミスを犯したんだ!」と、私にしてみれば不毛な質問ばかりを大きな声で繰り返していました。
「申し訳ございません」とひたすら頭を下げるスタッフに「お前はすいませんしか言えないのか!」と追い討ちをかけます。ここでミスをした理由を素直に答えたところで「言い訳するな!」とますます火がつくことは目に見えています。
他のスタッフに聞くと、このような光景は日常茶飯事で、このことが原因で辞めて行ったスタッフも何人かいるとのこと。中には軽度のうつ病にまでなったスタッフがいて、退職する際に人事部にこのことを訴えてみたそうですが、数字を残している店長だっただけに、会社としては何もできなかった過去があるとのことでした。
店長の様子を観察
このままだったら、この店はダメになってしまうと思った私は、なんとか感情論で店長のパワハラを緩和できる方法はないかと、色々思案しました。毎日、店長の様子を観察し、なんとか隙はないかと、探し続けました。観察を続け、会話を重ねることで、あることに気がついてきました。それは、店長が本当は人情派で、気が弱く、誰かにかまってもらいたい欲求が強い人だということです。
一見、パワハラをすることで強そうな印象を持ちますが、内情はもろく繊細で、自分を守るための術として威勢よくしているのだということが分かってきたのです。「本当はすごく寂しくて、孤独な人なんだ」と見抜いてから、店長に対する見方が変わりました。
店長と打ち解けるように努力
ただ私だけが変わっても、スタッフのストレスが改善されなければ意味がありません。私は、日常の中でどんな些細なことでも店長に報告相談を怠らず、自分だけで解決できる問題でもたくさん店長に頼るようにしました。
「他の店ではこんな店長のもとで働いてつらかった」という他店の店長の話を誇張して話して聞かせ、パワハラ店長に自信を持ってもらうように働きかけたりもしました。「その点、○○店長はいつも本気でスタッフとぶつかっていて、本当にスタッフ思いですよね」と言い添えることは忘れません。
「俺だって、色々大変なんだよ」と気を許し始め、さらに「みんなが自分を恐れていることも、知っている。」という弱音も少しずつ吐いてくれるようになりました。「大丈夫です。ただ伝え方がほんの少し違っているだけです。特に今の若い子は怒られることに慣れていないですから、私たちの年代から叱り方を変えていかないといけないんですよ。」という話をできるようにまでなってきました。
私が間に入ることで、少しずつスタッフと店長の間にあった溝が少なくなってきました。パソコンから離れて、昼食をとるスタッフに話しかける店長の姿も見られるようになりました。
サプライズで誕生日を祝う
そんなある日、みんなで計画して閉店後にサプライズで店長の誕生日ケーキを用意しました。年の数のろうそくを立て、ハッピーバースデーを合唱しました。少し照れながら、店長は嬉しそうにフッと火を吹き消しました。ケーキのプレートには「店長、私たちのためにいつもありがとう」と書きました。
その日を堺に、店長のパワハラはほとんどなくなりました。角がとれたように丸くなった店長は、今でも芯はとても厳しい人です。きっと自分に厳しい分、それを全てのスタッフに求めていたのでしょう。あの時、スタッフで一致団結して店長の心の氷を溶かしたことは、とても良かったと思っています。今では、必要な時以外はパソコンの電源は落とすようになり、店にも積極的に立つような店長になりました。
陰で「元パワ」とあだ名がついていることは、本人だけが知りません。