今回は、元小売店事務員さんが、「突然異動辞令を出されたり」、「一人だけイベントに誘われなかったり」、「仕事のミスをさらし者にされたり」したパワハラ体験談をご紹介してみます。パワハラは、ある日突然、パワハラ店長に異動辞令が出て解決したそうです。真面目に仕事を頑張っているとパワハラ店長から少し信頼されたりもしたそうです。異動が多そうな会社では、少し我慢するのもパワハラ対策として有効かもしれないです。
異様な雰囲気の支店へ異動
40歳の専業主婦です。20代半ばの頃のことです。中部地方の小売店で働いていました。社員は男女とも20~30代が10人ほどいました。店長は40代半ばの男性でした。社員はみんな店頭に立つ接客仕事で、私一人だけ総務や経理を担う事務員でした。
私は元は近隣の他店で接客仕事をしていましたが、何の前触れもなくこの支店へ異動となりました。初めての総務や経理の仕事に面喰らって、毎日必死でした。
この支店は噂には聞いていましたが、店長を中心にみんな仲がいいです。仲がいいと言うか、私にとってはお互いの距離が近すぎます。みんなが店長を頼りにして尊敬しているようにも見えますが、店長を必要以上にたててチヤホヤしてご機嫌をとっているようにも見えます。
店長は部下に冗談を言ったり、飲みに連れて行ったり、部下を可愛がっていますが、誰も店長に意見を言う人はいませんでした。一切逆らえず、絶対服従という雰囲気でした。
みんな慕っているように見えながら、実際は店長にすごく気を遣っていました。異動してきた私としては、異様な雰囲気に嫌悪感を覚えました。
突然の異動辞令
私は異動辞令が出る直前に結婚が決まったばかりでした。今から会社に話して、退職して辛い長距離恋愛を終わらせようと喜んでいるところでした。ところが突然に異動辞令が出たのです。
辞令が出た日は私は休みだったので、異動前の店舗の店長から電話で異動を聞かされました。その店長も知らされていなかったそうです。
辞令が出てから、異動先の店長から何度か電話がありましたが、私はショックで電話に出る気にはなれませんでした。それでも何度目かの電話に出てみると、「やることはいっぱいある。おまえが来ないとどうにもならない。早く引き継ぎ作業をするように。」という一方的な話でした。
もうすぐ結婚するという喜びに胸を膨らませているところに、あまりに酷い事態になりました。
みんなにも店長にも不信感を抱く
私は泣く泣く結婚を延期して会社に残ることにしました。いざ異動の日に次の店舗に出勤してみると、何とそこの社員たちはみんな私に異動辞令が出ることをずっと前から知っていたそうです。みんな総務や経理の仕事に回ることは嫌がったので、他店から私を呼んだという次第でした。
異動について話し合う段階を飛ばして、突然に辞令を発表して、私が断るタイミングを与えないという卑怯なやり方でした。部下を守るために他店の社員に犠牲を強いたという形でした。私はみんなにも店長にも不信感を抱きました。
新しく総務や経理の仕事を始めた私は、毎日大変でした。この業務は店舗内で他に知っている人はおらず、誰かと仕事を共有しているわけではありません。引き継ぎ作業を思い出しながら、あとは自分で今までのファイルを見ながら手探りでした。
この不安と緊張感、周りへの不信感、結婚を延期にした失望感から、私はかなり堅い表情をしていました。ニコリと笑って愛想をふりまく気にはなれなかったのです。
一人だけ飲み会に誘われない
部下は自分になついてくるものだと思っていた店長としては、私が本当に可愛くなかったのでしょう。また店長は総務や経理の知識はないので、私と仕事の話も出来ません。忙しく仕事をしている私にとりつくしまもなく、段々と腹が立ってきたようでした。
店長はみんなと話して盛り上がったりしていましたが、私に話しかけることはありませんでした。そんな私をみんなも遠巻きに見ているだけです。
店長とみんなは、私を除いてランチに行ったり、飲み会を開いたり、近場の旅行に行ったりしていました。私は全く誘われませんでした。
私はこの店舗の仲間意識に嫌悪感があったので、誘われなくても構いませんでした。けれど、一人だけ誘わないという行為、ランチや飲み会の翌日には私の前でその思い出話で盛り上がる行為に、ますます嫌悪感が募りました。
経理担当のチェック
たまに他店舗の総務や経理担当の人が、事前連絡なしに私の休みの日に店舗を訪れることがありました。私が仕事をキチンと出来ているかチェックしに来るのです。
この人は社内でベテランの女性社員で、店長の不倫相手でした。店長から私への不満を聞いていたのでしょう。私が翌日に出勤してみると、記録の残し方などの注意が書かれた私宛のメモがみんなの見えるところに貼られていました。
メモの最後には「これくらいのことは常識です」とまで書かれていました。みんなは「常識って書かれてる~」と笑っていました。
不備を指摘されたことや嫌味を言われたことは構いませんが、つくづくやり方が汚いと思いました。
真面目に仕事に取り組んだ結果
異動して数ヵ月たつと、みんなが嫌がった総務や経理の仕事を、私が一から取り組んでこなしていく様子に、店長は私を少し信頼したようでした。
また、私は会社主催のボランティア事業に毎回参加していました。店舗内から任意で参加するのは毎回店長と私しかいなかったのです。そのことも店長から信頼を得たようでした。
店長に異動辞令
異動してきて半年後、転機が訪れました。店長に北海道への異動辞令が出たのです。店長は中部地方の人事権はありましたが、本社の人事課から辞令を出されては抗いようがありません。
その辞令が出た時、私もびっくりして店長に「北海道に行かれるんですか?」と、自分でも不意に店長に話しかけていました。店長は「せいせいするだろ?」と言って笑っていました。私に嫌われていることに気づいていたのでしょう。
私はさすがに本音は言えずに、「お世話になりました」と深々と頭を下げました。そのあっさりとした社交辞令に、店長と私でお互いに苦笑いしました。
上司に嫌悪感を抱く私、そんな私に手をこまねく腹立たしさから仲間外れにしてくる上司、その水面下での争いは、ある日あっけなく苦笑いとともに終わりを迎えました。