今回は、50代正社員(女)さんが、体育会系のノリで、圧力をかけてくるパワハラ上司パワハラ対策として試してみた方法をご紹介してみます。パワハラ対処方法として、1.観察、2.「事実」と「解釈」の仕分け、3.パワハラ上司の上の上司への相談、4.パワハラ上司との話し合い、の4段階で対策した結果、パワハラを解決したそうです。更に、今回の方法の利点・欠点、パワハラを笑いに昇華させる等のパワハラ対策アイデアについても記載されています。

パワハラ被害人物紹介(著者)

50代女性。関西在住。

中小企業の正社員やパート、契約社員などいろいろ経験しています。

正社員になった時のパワハラ体験談

契約社員から正社員に変更されて数年経ったころのことです。

それまでの契約金額の8倍くらいの業務の実務作業担当をすることになりました。

その業務の管理者となった直属の上司が困った人だったのです。

いわゆる、体育会系のノリで対処に困るような圧力をかけてくる人でした。

打ち合わせ資料を作ろうとするときも、具体的な内容を言わないのです。

「ここはひとつ、ガッツリ向き合ってほしい!」

何がほしいのか、わからないため、悩みつつ資料を提出すると、今度は、

「君はこの問題の本質をわかっていない。本当に考えたのかね?」

具体的に教えてほしいというと、

「答えをすぐ求めるな」

黙っていると、

「すぐにそうやってむくれるのは君の欠点だ」

いったいどうしろというのかと、ほとほと困りました。

それも、お客様の前で叱責することもあって、こっそりお客様にお詫びを入れるフォローまで必要でした。

正社員になった時のパワハラ解決方法

いろいろと言われていることをそのまま受け止めると気持ちが苦しくなるばかりで、作業どころでは、なくなってしまいます。悩んだ末、採用したのは、今受けている圧力を分解して、対処することと、しないことに仕分けるという方法でした。

(1)観察

いつどんなことを言われたかを、ひたすらメモしました。どんな状況のときに、具体的に言われたセリフを書き留める方法です。また、どのくらい感情的になっているかも、覚えている限り記録しました。

(2)「事実」と「解釈」の仕分け

言われた内容を、「事実」なのか「解釈」なのかで、仕分けて行きました。百均に売っているような付箋で色分けし、貼り出していくイメージで整理しました。

例えば、こんなことを言われたとします。

「資料のタイトルと内容に論理矛盾がある。こんな記述をしているようでは、君はこの案件を根本的に理解していない。本当に時間をかけて考えたのかね?かけてないだろう?こんな仕事の向き合い方はお客様に失礼だ」

この場合、

・資料のタイトルと内容に論理矛盾がある
・(私は)この案件を根本的に理解していない
・(私は)時間をかけて考えていない
・(私の)仕事の向き合い方はお客様に失礼だ

という4つの論点が入っています。

最初の論点は、国語的に文章が矛盾しているのであれば、私の落ち度として事実です。

でも、次の論点の理解度や、その次の時間をかけたかどうかは、なんらかの客観的基準を設けていない限り、上司独自の解釈が入っており、事実であるかどうかは精査が必要です。

また、事実であったとして、仕事の成果に落ち度があるかは別問題です。

更に、最後の論点は、一方的に上司の価値観による解釈なので、私にとっては無関係だと言えます。

このような形で、改めるべき事実と、放っておくべき解釈の問題とに仕分けて行きました。

(3)さらに上司への相談

ある程度事例がたまったところで、直接上司に、事実と解釈を分けて話し合うよう、提案をすることにしました。

ただ、急に直接本人へ話をすると「キャリアの浅い者が何を言う」と拒絶される可能性もあります。

小さな会社で相談窓口もないし、第三者機関に相談するのもためらわれたので、まずは直属の上司の上の立場の人に、相談する形にしました。

主に訴えたのは、次の点です。

・業務の目的や成果目標(仕様書)に沿っているかどうかで成果を判断してほしい
・お客様への「向き合い方」「成果の出し方」は、人それぞれ異なっていることを認めてほしい
・自分なりにがんばっているというのは、主観の相違だから、そこを評価しないでほしい

問題の上司を悪く言うというより、互いの仕事への解釈の違いから、チームで動くことが難しいこと、お互いの良さを認め合いながら進めたいのに聞いてもらえないでいることを強調する形にしました。

一方的に相手を悪く言うのは、かえってこちらの認識が偏っているように見えるかもしれないと思ったので、このへんの言い方は工夫しました。

また、事実に基づいたものであることを、記録などをまじえて資料をつくり、プレゼンしました。

(4)話し合い

上の立場の人が中に入って、問題の上司と私とで、今後の業務の進め方についての打ち合わせをもつという形で話し合うことになりました。

直属の上司が、ほんとうに納得したのかはわかりません。でも、解釈が違うということは認めると言ってくれました。

その後は、何か言われるたびに、その場で「事実」と「解釈」の部分を仕分けて「確認」を行い、事実の部分の改め方をすりあわせるという方法で対処しました。

以前だと「口答えするな」と言われていたことでも、この「確認してよいですか?」のセリフのあと、改めるべき事実と、主観の相違だから保留する部分とに分けて話をすると、とりあえず聞いてくれるようになり、事実ベースのところでは、具体的な方法などについての意見も言ってくれるようになりました。

最終的には、上の判断で、問題の上司と私との部門を分ける形で、私と問題の上司との立場が上下にならないようにしてもらいました。部署が分かれてからは、比較的よい関係となりました。

今から思えば、その上司も、どうやって部下と対話してよいのか、わからなかったところがあったのかな、と思います。

相手がどんな価値観で、どんな思考をもっているのだろうと想像し、自分の価値観や考え方との違いを出して、どちらが良いではなくて、違いがあるなかで、どうやって共存していくべきかを考えたのが、よかったのかなと思います。

今回のパワハラ対策方法のメリット・デメリット

(1)メリット

「事実」と「解釈」の分析と改善案の提示を行う方法のメリットとしては、やはり自分が冷静になれるというのが最大のポイントだと思います。

事実を整理した中で、自分の実力が圧倒的に足りないのであれば、これはやはり上司の指摘の方が適切なのでしょうし、自分が努力すべきことです。どんなに時間をかけて、がんばっても足りないなら職場に向いていないのかもしれないという判断も、客観的にできます。

でも、言い方のトゲは別です。人格を否定されるような言われ方をするのは、勝手な価値観を押し付けられているわけです。解釈の違いや価値観の相違は、交わることのない領域であり、ビジネス上問題なければ合わせる必要もないので、気が楽になります。

(2)デメリット

今回の上司は、論理的な提案については問題なく話を聞いてくれるタイプだったので、こういう方法が成立しましたが、感情的になりすぎる場合は「生意気言うな」「屁理屈言うな」と逆ギレするかもしれないです。

ただ、上の人をたどれば、かならず論理的に話を聞いてくれる人がいます。上の立場になればなるほど、視野が広いです。また、第三者機関なら、こういう分析はしっかりと受け止めてくれます。

あまりに感情的な上司に捕まってしまった場合、会社組織では、権力のある人の話は、おとなしく聞いてくれる場合が多いので、話の持って行き方を工夫するとよいのかなと思います。

その他試してみたかったパワハラ対策方法

当時は、思いつめていたので余裕もなく、仕事でよく使う付箋紙で、メモを分析する方法をとりましたが、もっと気楽にやってみる方法もあったかもなあと思っています。

例えば、言われたセリフをお題にして大喜利をやるイメージです。相手の見た目とか、そういうのを笑うのではなく、言われた内容に対するオチを探すような形。

重い問題でも、少し別の角度から眺めて笑いに昇華させることで、客観的な視点やポジティブな視点が増えます。

また、柔らかく楽しんでいることを(たとえ無理やり装っていたとしても)態度に出すことで、自分の中にも余裕ができます。

たいてい、こんな上司は、他の部下のところでも似たようなことをして圧力をかけています。

そんな他の部下を元気づけるためにも、どんなことを言われても、まずは笑いに昇華させる部分を見つけようとすることは、大事だったかもしません。